従業員を初めて雇ったり、家族へ給与を支払い始めたりするときに確認したいのが、 「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」です。
法人が役員報酬や従業員給与の支払いを始める場合も対象になります。
この記事では、国税庁の実際の様式を使い、開設の場合を中心に、書き方・提出期限・提出後に必要になる源泉所得税の手続きまで解説します。
まずここだけ確認
提出期限:給与支払事務所等を開設した日から1か月以内
提出先:給与支払事務所等の所在地を所轄する税務署
対象:新たに給与・役員報酬などの支払事務を始める事業者
提出方法:e-Tax・郵送・税務署への持参
2026年の注意:2026年1月1日以後の個人事業の開業では、開業届とは別に本届出も確認
家族を青色事業専従者として雇う場合は、 青色事業専従者給与に関する届出書の書き方 もあわせて確認してください。
青色申告の制度やメリット についてはこちらで詳しく解説しています。
給与支払事務所等の開設届出書とは?
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書は、給与等の支払事務を取り扱う事務所等を開設・移転・廃止したことを税務署へ知らせるための書類です。
給与や役員報酬を支払うと、原則として支払者は給与から所得税・復興特別所得税を源泉徴収し、国へ納付する必要があります。
「従業員を雇った日」と「給与支払事務所等の開設日」は必ずしも同じとは限りません
届出期限は、給与等の支払事務を取り扱う事務所等を開設した日を基準に考えます。
提出期限は開設から1か月以内
給与支払事務所等を開設した場合は、開設した日から1か月以内に届出書を提出します。
例:2026年4月1日に開設
原則 2026年5月1日まで
提出が遅れていることに気付いた場合はそのままにせず、できるだけ早く提出し、源泉所得税の納付漏れがないかも確認しましょう。
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【2026年の注意】個人事業の開業届とは別に確認する
2026年1月1日以後に給与支払事務所等を開設する個人事業主は、開業届を提出している場合でも、本届出の要否を別途確認する必要があります。
古い解説記事には注意
以前の取扱いを前提に「開業届に給与の情報を書けば給与支払事務所等の開設届は不要」と説明されている記事があります。2026年以後の開設については、最新の国税庁案内を確認してください。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書の実際の様式
下の画像は、国税庁の実際の「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」に、開設時に確認したい項目を①〜⑧で示したものです。
用紙には移転・廃止用の欄もありますが、この記事では新しく給与支払事務所等を開設するケースを中心に説明します。

出典:国税庁「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」に番号を追記
新規開設の場合は、主に①〜⑧を確認します。
特に間違えやすいのが、②の「届出書種別」、③の「給与支払を開始する年月日」、⑤の「届出の内容及び理由」です。
①〜⑧|給与支払事務所等の開設届出書の書き方
| 番号 | 項目 | 記入例 | ポイント |
|---|---|---|---|
| ① | 提出先税務署 | 渋谷税務署 | 給与支払事務所等の所在地を所轄する税務署を記入します。 |
| ② | 届出書種別・開設年月日 | 種別:1 令和8年4月1日 |
新規開設なら届出書種別は「1」。実際に給与支払事務所等を開設した日を記入します。 |
| ③ | 給与支払を開始する年月日 | 令和8年5月25日 | 開設した月中に給与の支払いを開始しない場合に、開始日または開始予定日を記入します。 |
| ④ | 事務所開設者 | 山田拓也 東京都渋谷区… |
住所・氏名または法人名・個人番号または法人番号・電話番号などを記入します。法人は代表者氏名も記載します。 |
| ⑤ | 届出の内容及び理由 | 1 または 2 | 開業・法人設立に伴う開設なら「1」、既存事業者が新たに給与支払事務所等を開設する場合は「2」など、該当する区分を記入します。 |
| ⑥ | 給与支払事務所等について | デザインオフィスTAKU 東京都渋谷区… |
給与の支払事務を行う事務所の名称・所在地・電話番号などを記入します。 |
| ⑦ | 従業員数 | 役員0人 従業員1人 |
給与等を支払う人数を職種別に記入します。役員・従業員以外は「その他」に職種と人数を記載します。 |
| ⑧ | その他参考事項・税理士署名 | ― | 通常の新規開設で特記事項がなければ空欄となることがあります。税理士が作成した場合は税理士署名欄を使用します。 |
③は必ず記入する欄ではありません
国税庁の記載要領では、給与支払事務所等を開設した月中に給与の支払いを開始しない場合に、給与の支払開始日または開始予定日を記載します。
「届出の内容及び理由」は開設理由によって番号が変わる
⑤は少し分かりにくい欄です。
| 区分 | 主なケース |
|---|---|
| 1 | 開業または法人設立に伴い給与支払事務所等を開設 |
| 2 | 既存の事業で、新たに給与支払事務所等を開設 |
| 3 | 給与支払事務所等の所在地を移転 |
| 4 | 既存の給与支払事務所等への引継ぎ |
この記事では新規開設を想定しているため、通常は「1」または「2」を確認することになります。
届出書はe-Taxでも提出できる
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書は、e-Taxによる電子提出に対応しています。
| 提出方法 | ポイント |
|---|---|
| e-Tax | e-Taxソフトを利用してオンラインで作成・提出できます。 |
| 郵送 | 所轄税務署へ書面を送付します。 |
| 税務署へ持参 | 税務署窓口へ書面で提出できます。 |
書面の控えへの受付印は廃止されています
2025年1月以降、税務署では申告書・申請書・届出書などの控えへの収受日付印を行っていません。必要に応じて控えを保管し、提出年月日を記録しておきましょう。
届出後は源泉所得税の納付も始まる
給与を支払うようになると、届出書を出して終わりではありません。
給与から源泉徴収した所得税・復興特別所得税は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに納付します。
ただし、給与の支給人員が常時10人未満の場合は、 源泉所得税の納期の特例の承認申請 を利用することで、対象となる源泉所得税を年2回にまとめて納付できる場合があります。
特例が承認された後の具体的な納付方法については、 源泉所得税の納期の特例を適用した後の対応方法 で解説しています。
給与支払事務所等の開設届出書に関するよくある質問
Q. 一人社長で役員報酬だけでも提出しますか?
法人から代表者へ役員報酬を支払う場合も給与等の支払いに該当するため、給与支払事務所等を開設した場合は本届出を確認します。
Q. 2026年に個人事業を開業しました。開業届だけで大丈夫ですか?
2026年1月1日以後に給与支払事務所等を開設した場合は、個人事業の開業届とは別に本届出の要否を確認してください。
Q. 給与支払を開始する年月日は必ず書きますか?
いいえ。給与支払事務所等を開設した月中に給与の支払いを開始しない場合に、給与の支払開始日または開始予定日を記入します。
Q. 提出期限を過ぎてしまったらどうしますか?
気付いた時点で早めに提出しましょう。給与をすでに支払っている場合は、源泉徴収や源泉所得税の納付漏れがないかも確認してください。
Q. e-Taxで提出できますか?
はい。「給与支払事務所等の開設等届出」はe-Taxによる電子提出に対応しています。
まとめ|給与を支払い始める前後の手続きをまとめて確認しよう
給与支払事務所等の開設届出書は、給与や役員報酬などの支払事務を新しく始めるときに確認する重要な届出です。
① 給与支払事務所等の開設日を確認する
② 原則1か月以内に届出書を提出する
③ 給与から源泉所得税を計算する
④ 源泉所得税の納付期限を管理する
⑤ 常時10人未満なら納期の特例も検討する
個人事業主の 確定申告や税務手続きの基本 についても確認しておきましょう。
税金全体をまとめて確認したい方は、 タクバツの税金ガイド もご覧ください。
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参考:国税庁・e-Taxの公式情報
- 国税庁「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
- 国税庁「新たに事業を始めたときの届出など」
- e-Tax「申請・届出手続(源泉所得税関係)」
- 国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」
本記事は2026年8月時点の法令および国税庁・e-Tax公表情報をもとに作成しています。


