医療費控除は、1年間の医療費が一定額を超えた場合に利用できる所得控除制度です。
この制度を活用し確定申告を行うことで、納めすぎた所得税が還付されるため、効果的な節税につながります。
この記事では、還付額を手軽に試算できる計算ツールから、具体的な控除額の計算方法、申告の手順まで、わかりやすく解説します。
【まずは試算】医療費控除の還付金を自動計算シミュレーター
医療費控除でいくら戻ってくるのか、まずは簡単なシミュレーターで試算してみましょう。
Webサイトやアプリで提供されている計算ツールを使えば、源泉徴収票や医療費の領収書を見ながら年収や医療費の総額、保険金などの情報を入力するだけで、還付金の目安を自動で簡単に算出できます。
多くは無料で利用でき、スマホからも手軽に確認できるため、確定申告をすべきかどうかの判断材料として役立ちます。
医療費控除とは?払いすぎた税金が戻ってくる制度の基本
医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得控除を受けられる制度です。
所得控除を受けると課税対象の所得が減るため、結果的に所得税が安くなります。
会社員などで源泉徴収によって税金を納めている場合は、確定申告をすることで納めすぎた所得税の還付を受けられます。
なお、個人事業主の方などの場合、医療費は事業の経費ではなく所得控除として扱われる点に注意しましょう。また、翌年度に課税される住民税の負担も軽減される仕組みです。
医療費控除額の計算方法を3ステップで解説
医療費控除額の計算は、国税庁が定める手順に沿って進める必要があります。
実際に控除される金額を正しく算出するために、3つのステップに分けて解説します。
まずは1年間に支払った医療費の総額を把握し、そこから保険金などを差し引き、最終的な控除額を確定させる流れです。
この計算結果が、税金の還付額を求めるための基礎となります。
ステップ1:1年間に支払った医療費の総額を出す
まず、控除の対象となる期間(その年の1月1日から12月31日まで)に支払った医療費の総額を計算します。
この医療費には、自分自身のものだけでなく、生計を同一にする配偶者や親族のために支払った分も合算できます。
集計する際は、病院から受け取った領収書や、健康保険組合などから送付される「医療費のお知らせ」といった医療費明細書を手元に準備するとスムーズです。
ステップ2:保険金や給付金で補填された金額を引く
次に、ステップ1で計算した医療費の総額から、保険金や給付金などで補填された金額を差し引きます。
対象となるのは、生命保険や医療保険から支払われる入院・手術給付金、健康保険から支給される高額療養費や出産育児一時金などです。
注意点として、差し引く保険金は、その支払い対象となった医療費の金額が上限となります。
受け取った保険金のほうが治療費より多くても、他の医療費からマイナスする必要はありません。
ステップ3:最終的な控除額を算出する(10万円または総所得の5%を差し引く)
最後に、ステップ2で算出した金額から一定額を差し引き、最終的な医療費控除額を決定します。
原則として差し引く金額は10万円です。
ただし、年間の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく「総所得金額等の5%」の金額を差し引きます。
総所得金額とは、給与所得や事業所得など各種所得の合計額のことです。
この計算により、所得が比較的少ない人は、医療費の負担が10万円に満たなくても控除を受けられる可能性があります。
【いくら戻る?】所得税の還付金額を求める計算式
医療費控除によって実際にいくらお金が戻ってくるのか(還付額)は、医療費控除額に自身の所得税率を掛けることで算出できます。
医療費控除額がそのまま還付されるわけではない点に注意が必要です。
所得税率は所得が多いほど高くなるため、同じ医療費控除額でも、所得が高い人ほど還付額は大きくなります。
具体的な計算式を理解し、自身の還付額を把握しましょう。
還付金額は「医療費控除額 × 所得税率」で決まる
所得税の還付金がいくら戻るかは、「医療費控除額×所得税率」という計算式で求められます。
例えば、医療費控除額が30万円で所得税率が10%の場合、還付される所得税は3万円です。
所得税率は、個人の課税所得金額によって5%から45%までの段階的な税率が定められています。
自身の所得税率を把握することが、正確な還付金額を知るための鍵となります。
あなたの所得税率は?課税所得金額ごとの税率一覧表
所得税の税率は、課税所得金額に応じて変動します。
ご自身の課税所得金額は、会社員の場合、勤務先から交付される源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を差し引くことで確認できます。
算出した課税所得金額に適用される税率は、以下の速算表をご参照ください。
| 課税される所得金額 | 税率 |
|—|—|
| 195万円以下 | 5% |
| 195万円超330万円以下 | 10% |
| 330万円超695万円以下 | 20% |
| 695万円超900万円以下 | 23% |
| 900万円超1,800万円以下 | 33% |
| 1,800万円超4,000万円以下 | 40% |
| 4,000万円超 | 45% |
年収・医療費別に還付金の目安をシミュレーション
ここでは、具体的な年収と医療費のケースを基に、還付金の目安をシミュレーションします。
所得税の還付額だけでなく、翌年の住民税がどれくらい軽減されるかも合わせて算出します。
住民税の軽減額は、医療費控除額に一律10%を掛けて計算されます。
ご自身の状況に近い例を参考に、還付金の全体像を把握してみましょう。
【年収300万円】年間医療費が15万円の場合
年収300万円(課税所得137万円、所得税率5%)の人が、年間で15万円の医療費を支払い、保険金などの補填はなかったケースで考えます。
医療費控除額:15万円-10万円=5万円
所得税の還付額:5万円×5%=2,500円
住民税の軽減額:5万円×10%=5,000円
この場合、所得税と住民税を合わせて合計7,500円の負担が軽減される計算になります。
【年収500万円】年間医療費が30万円の場合
年収500万円(課税所得268万円、所得税率10%)の人が、年間で30万円の医療費を支払い、保険金などで5万円が補填されたケースです。
医療費から補填額を引いた額:30万円-5万円=25万円
医療費控除額:25万円-10万円=15万円
所得税の還付額:15万円×10%=15,000円
住民税の軽減額:15万円×10%=15,000円
合計で30,000円の負担軽減効果が見込めます。
【年収700万円】年間医療費が50万円(高額な治療)の場合
年収700万円(課税所得407万円、所得税率20%)の人が、高額な治療により年間50万円の医療費を支払い、保険金などの補填はなかったケースを考えます。
年収800万円の人でも、課税所得が695万円以下であれば同じ税率が適用されます。
医療費控除額:50万円-10万円=40万円
所得税の還付額:40万円×20%=80,000円
住民税の軽減額:40万円×10%=40,000円
この場合、合計120,000円もの税負担が軽減されることになります。
医療費控除の対象になるもの・ならないものの具体例
医療費控除を計算する上で、どの費用が対象になるかを知ることは非常に重要です。
原則として、治療目的の支出が対象となり、予防や美容目的の支出は対象外です。
支払った医療費の3割負担分や、治療にかかった消費税も対象に含まれます。
また、保険適用外の自由診療でも、治療目的であれば対象となる場合があります。
ここでは具体的な例を挙げて解説します。
対象になる費用の例一覧
医療費控除の対象となる費用には、以下のような例があります。
医師や歯科医師による診療費、治療費(インプント、セラミック治療、歯列矯正など)
治療のための医薬品購入費(ドラッグストアで購入した風邪薬などの薬代も含む)
病院、診療所などへの交通費(公共交通機関が基本ですが、緊急時のタクシー代も認められる場合があります)
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術費
出産費用や入院費用(定期検診、通院費用も含む)
医師の指示による補聴器の購入費用
レーシック手術や不妊治療、人工授精の費用
対象にならない費用の例一覧
一方で、以下のような費用は医療費控除の対象にはなりません。
美容目的の整形手術費用や歯列矯正
健康診断や人間ドックの費用(重大な疾病が発見され、治療を行った場合を除く)
病気の予防や健康増進のためのビタミン剤、サプリメントの購入費
自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代
医師や看護師への謝礼
自己の都合で個室などを利用した場合の差額ベッド代
里帰り出産のために利用した交通費
医療費控除の申請に必要な確定申告の手順
医療費控除を受けるためには、会社員であっても自身で確定申告を行う必要があります。
確定申告のやり方は、まず必要書類を準備し、確定申告書を作成して税務署に提出するという流れです。
申告期間は原則として、医療費を支払った翌年の2月16日から3月15日までです。
もし申告内容を間違えた場合でも、5年以内であれば更正の請求という手続きで修正が可能です。
2025年や2026年の申告に向けて、事前に手順を確認しておきましょう。
e-Taxを利用すれば、マイナポータル連携で「医療費のお知らせ」情報を自動入力でき、申告の仕方も簡単になります。
医療費控除の計算に関するよくある質問
医療費控除の計算や申告について、わからない点や疑問に思う点は多いものです。
例えば、家族の医療費を合算できるのか、医療費が10万円に満たない場合はどうなるのかなど、具体的な状況によって判断が違うこともあります。
ここでは、特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
詳しく解説するので、ご自身の状況と照らし合わせて確認してください。
家族の医療費もまとめて合算して計算できますか?
はい、合算して計算できます。
「生計を同一にする」配偶者や子供、その他の親族のために支払った医療費は、まとめて申告が可能です。
この場合、必ずしも扶養家族である必要はなく、例えば共働きの配偶者や、仕送りで生活する別居の親の医療費も世帯で合算できます。
一般的に、家族の中で最も所得が高い人がまとめて申告すると、所得税率が高いため節税効果が大きくなります。
医療費の合計が10万円以下だと控除の対象になりませんか?
いいえ、10万円以下でも控除の対象になる場合があります。
年間の総所得金額等が200万円未満の人は、「10万円」の代わりに「総所得金額等の5%」を超えた部分が控除対象となるためです。
例えば総所得金額が180万円の場合、その5%である9万円を超えた医療費が控除の対象となります。
そのため、医療費の合計が10万円に満たない場合でも、諦めずに自身の所得金額を確認することが重要です。
会社員の場合でも医療費控除を受けるには確定申告が必要ですか?
はい、確定申告が必要です。
会社員(サラリーマン)が行う年末調整では、生命保険料控除や地震保険料控除などは手続きできますが、医療費控除を申告することはできません。
そのため、給与所得者が医療費控除を受けたい場合は、自身で期間内に確定申告を行う必要があります。
還付申告であれば、翌年1月1日から5年間提出が可能です。
まとめ
医療費控除は、家計の負担を軽減できる重要な制度です。個人事業主(青色申告・白色申告)や派遣社員、高齢者など、多くの人が対象となり得ます。医療費控除の適用が難しい場合でも、特定の市販薬の購入費が対象となるセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)という選択肢もあります。
ふるさと納税などの他の税制度と医療費控除は併用可能です。ただし、医療費控除を適用するとふるさと納税の控除限度額が減少する可能性があるため、制度を正しく理解し、忘れずに申告を行いましょう。


