基礎控除とは、すべての納税者の合計所得金額から一定額を差し引くことができる所得控除の一種です。
2026年(令和8年)分の所得税から適用される税制改正により、この基礎控除の仕組みが大きく変わります。
本記事では、国税庁のタックスアンサー(No.1199)などの情報も踏まえ、最新の法律に基づく基礎控除の改正内容や計算方法、会社員に必須の年末調整の手続きについて詳しく説明します。
2024年分や2027年(令和9年度)以降の住民税にも影響するため、変更点を正しく理解することが重要です。
基礎控除とは?すべての納税者の所得から差し引かれる基本的な控除制度
基礎控除とは、納税者本人の合計所得金額に応じて、所得から差し引かれる所得控除のことを指します。
所得税の基礎控除額は、令和7年分以降、合計所得金額132万円以下の場合に95万円、2,350万円超2,400万円以下の場合に48万円など、所得金額に応じて段階的に設定されています。合計所得金額が2,500万円を超えると控除は適用されません。また、住民税の基礎控除額は43万円で、令和7年度税制改正でも変更はありません。
わかりやすく言うと、税金の計算対象となる所得を減らし、納税の負担を軽くするための基本的な仕組みです。この制度の由来は、最低限の生活を保障するという考えに基づいています。
対象者は原則としてすべての納税者で、会社員や個人事業主といった働き方の違いにかかわらず適用されます。基礎控除が適用されることで、課税対象となる所得がその分だけ少なくなり、結果的に所得税や住民税の節税につながるという意味を持ちます。扶養控除など他の所得控除を適用しない場合でも、基礎控除のみは適用されます。
【2025年(令和7年)分から】基礎控除額はどう変わる?改正点を新旧比較
2025年(令和7年)分の所得税までは現行の制度が適用されますが、2026年(令和8年)分からは新しい制度に変わります。
2024年12月に閣議決定された令和7年度税制改正大綱により、子育て世帯等への支援として基礎控除額の見直しが行われました。
この法改正による最大の変更点は、所得税の控除額が大幅に引き上げられることです。
ただし、これは一律の増額ではなく、納税者の所得に応じて控除額が変動する仕組みが導入されます。
改正前の制度と比較し、自身の所得ラインで控除額がどのように変更されるかを確認することが重要です。
この見直しは、給与所得控除に上乗せされる形で適用されるため、特に給与所得者の手取りに影響を与えます。
所得税の基礎控除額は最大95万円に大幅引き上げ
2026年(令和8年)分以降の所得税において、基礎控除額は現行の48万円から最大で104万円へと大幅に引き上げられます。
この増額は、特に子育て世帯や若者夫婦世帯の負担軽減を目的としています。
控控除額が上がったことにより、課税対象となる所得金額が大きく減るため、結果として所得税額が少なくなり、手取りが増えるというメリットがあります。
ただし、誰もが一律で104万円の控除を受けられるわけではありません。
控除額は納税者本人の合計所得金額に応じて段階的に設定されており、所得が高い場合は控除額が減少する仕組みになっています。
この変更により、多くの給与所得者にとって節税効果が増えることが期待されます。
住民税の基礎控除額(43万円)は変更なし
所得税の基礎控除が大幅に引き上げられる一方で、個人住民税の基礎控除額は原則として43万円のまま変更ありません。
所得税と住民税では控除の仕組みが異なるため、注意が必要です。
ただし、所得税と住民税の人的控除額の差によって生じる負担を調整するための「調整控除」という仕組みがあります。
今回の所得税の基礎控除改正に伴い、この調整控除についても見直しが行われる予定です。
住民税の計算は前年の所得に基づいて行われるため、2026年分の所得に対する住民税は2027年度に課税されます。
所得税のように控除額そのものに大きな変更はない点を理解しておくことが大切です。
あなたの基礎控除額はいくら?合計所得金額別の早見表
基礎控除額は、合計所得金額によって異なります。2025年(令和7年)分所得税から基礎控除額が変更され、低所得者・中所得者の税負担を軽減するために控除額が上乗せされます。
合計所得金額に応じた基礎控除額は以下の通りです。
* 合計所得金額132万円以下:95万円
* 合計所得金額132万円超336万円以下:88万円
* 合計所得金額336万円超489万円以下:68万円
* 合計所得金額489万円超655万円以下:63万円
* 合計所得金額655万円超2,400万円以下:58万円
* 2,400万円超2,450万円以下:32万円
* 2,450万円超2,500万円以下:16万円
* 2,500万円超:0円
なお、これらの控除額の一部は2025年(令和7年)と2026年(令和8年)のみの措置であり、2027年(令和9年)以降は変更される可能性があります。
納税者本人の合計所得金額によっては最低額が0円になる点は変更ありません。
合計所得2,400万円から控除額が段階的に減少
基礎控除は、納税者本人の合計所得金額が2,400万円を超えると、控除額が段階的に減少する仕組みが適用されます。現行制度では、合計所得金額が2,400万円を超え2,450万円以下の場合、控除額は32万円に、2,450万円を超え2,500万円以下では16万円に減額されます。
この所得制限は、高所得者に対して応分の負担を求めるという考え方に基づいています。2020年(令和2年)から適用されているこの所得制限の考え方は維持されますが、2025年(令和7年)の税制改正では、合計所得金額2,350万円以下の個人の基礎控除額が10万円引き上げられ、控除額の階層と金額が一部変更される点が主な変更点となります。
合計所得2,500万円超で基礎控除は適用外に
納税者本人の合計所得金額が2,500万円を超える場合、基礎控除の適用は完全になくなります。
つまり、控除額は0円となり、基礎控除による税負担の軽減措置は受けられません。
この基準は、税制における高所得者への優遇をなくすための要件として設定されています。
基礎控除の適用を受けるための所得の枠は、2,500万円が上限となります。
この基準は現行制度でも2026年からの新制度でも変更はありません。
したがって、合計所得金額が2,500万円を超える方は、年末調整や確定申告において基礎控除の適用がないことを念頭に置いておく必要があります。
【パート・アルバイト】基礎控除の増額で変わる「年収の壁」を解説
2026年からの基礎控除の増額は、パートやアルバイトで働く方々の「年収の壁」にも大きな影響を与えます。
これまで所得税が非課税となる上限は、給与所得控除55万円と基礎控除48万円を合わせた年収103万円でした。
これが、いわゆる「103万円の壁」です。
今回の改正により、所得税の基礎控除が引き上げられることで、この所得税が非課税となる年収の上限ラインが変わります。
この変更は、扶養内で働きながらもう少し収入を増やしたいと考えている方にとって、働き方を調整する上で重要なポイントとなります。
年収160万円以下なら所得税が非課税になる仕組み
2026年からの税制改正により、一定の要件を満たす給与所得者の場合、所得税が非課税となる年収のボーダーラインが約178万円に引き上げられます。これは、基礎控除と給与所得控除の見直しによるものです。具体的には、2026年(令和8年)および2027年(令和9年)分については、基礎控除が特例で最大104万円、給与所得控除が特例で74万円となり、合計178万円が非課税ラインとなります。
所得税は、収入から必要経費や所得控除を差し引いた課税所得に対して計算されるため、控除額が増えるほど税負担は軽減されます。
扶養内で働ける年収の上限はどう変わる?
令和7年度の税制改正により、基礎控除と給与所得控除が引き上げられ、所得税の課税最低限が103万円から123万円に変わります。これにより、給与収入が123万円までは所得税が非課税となります。
また、配偶者控除や扶養控除の対象となる扶養親族等の合計所得金額要件も改正され、58万円以下(改正前:48万円以下)となります。 このため、配偶者控除や扶養控除の対象となるための年収要件が変更され、いわゆる「103万円の壁」は維持されません。
自身の所得税が非課税になるラインと、扶養から外れるラインは異なる場合があるため、その点を理解することが重要です。事業専従者として専従者給与を受け取っている場合や、役員である配偶者なども同様の考え方となります。
基礎控除を受けるための手続き方法
基礎控除を受けるためには、会社員の場合は年末調整、個人事業主やフリーランスの場合は確定申告で、自身の所得を正しく申告する必要があります。
これらの手続きを通じて、所得に応じた基礎控除を申告し、適用を受けることになります。
特別な申請書類を別途提出する必要はなく、それぞれの申告手続きの中で所定の欄に記入することで、基礎控除が所得から差し引かれます。
手続きを忘れると控除が適用されず、税金を多く納めることになるため、確実に行うことが重要です。
【会社員向け】年末調整の「基礎控除申告書」の書き方
会社員やサラリーマンの場合、基礎控除は年末調整で申告します。
勤務先から配布される「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」という書類に必要事項を記入して提出します。
この書類の「給与所得者の基礎控除申告書」部分に、ご自身のその年の給与所得の見積額を計算して入力します。
その所得金額に基づいて、右側の控除額の計算欄で自身の基礎控除額を確認し、該当するチェックボックスに印をつけます。
年の途中で転職や退職をした場合も、その年の収入を合算して正しく所得を見積もる必要があります。
【個人事業主向け】確定申告書への基礎控除額の記入箇所
個人事業主やフリーランスの方は、毎年行う確定申告で基礎控除を申告します。
確定申告書の第一表にある「所得から差し引かれる金額」の欄に「基礎控除」という項目があります。
ここに、ご自身の合計所得金額に応じた控除額を記入します。
控除額は、確定申告書第二表の「基礎控除」欄にも記載が必要です。
合計所得金額が2,500万円を超える場合は、この欄は空欄になります。
国税庁のウェブサイトで作成できる確定申告書等作成コーナーやe-Taxを利用する場合、所得金額を入力すれば基礎控除額は自動で計算・入力されるため便利です。
年末調整・確定申告で必要な合計所得金額の見積もり計算方法
基礎控除額を正しく申告するためには、まず自身の「合計所得金額」を正確に見積もる必要があります。
合計所得金額とは、給与所得や事業所得、不動産所得など、すべての所得を合計した金額のことを指します(一部の所得は除く)。
年末調整や確定申告の際には、その年1年間の収入から必要経費や各種控除を差し引いて、この総所得金額にあたる見積額を求めます。
この計算結果に基づいて、適用される基礎控除の金額が決定されるため、所得の計算は非常に重要なプロセスです。
給与収入しかない場合の所得計算シミュレーション
給与収入のみで他に所得がない会社員の場合、所得の計算は比較的シンプルです。
計算式は「給与収入(源泉徴収票の支払金額)-給与所得控除額=給与所得」となります。
給与所得控除額は給与収入に応じて自動的に決まるため、国税庁の速算表などで確認できます。
例えば、年収400万円の場合、給与所得控除額は124万円となり、給与所得は276万円です。
なお、業務で使うスーツ代などを個人的に経費として計上することはできません。
給与所得控除は、こうした給与所得者のための概算経費としての役割を持っています。
複数の所得がある場合の合計所得金額の算出方法
会社員としての給与のほかに副業収入があったり、公的年金や不動産所得など複数の収入源があったりする場合、それらの所得をすべて合算して合計所得金額を算出します。
例えば、給与所得と不動産所得がある場合は、それぞれの所得を計算した後に合計します。
個人事業主で青色申告を行っている場合は、所得金額から最大65万円の青色申告特別控除を差し引くことができます。
白色申告にはこの特別控除はありません。
事業所得や不動産所得に赤字が出た場合は、他の黒字の所得と相殺(損益通算)することも可能です。
これらの計算を経て、最終的な合計所得金額を確定させます。
基礎控除に関するよくある質問
ここでは、基礎控除について多くの人が疑問に思う点や、制度が複雑でわからないと感じる部分について、よくある質問とその回答をまとめました。
Q1. なぜ2025年から基礎控除額が大幅に引き上げられるのですか?
はい、この改正は子育て世帯や若者夫婦世帯の経済的負担を軽減し、持続的な賃上げとデフレからの完全脱却を後押しする経済政策の一張として行われます。
低所得者層を含む労働者の手取りを増やし、消費を活性化させることが主な目的であり、憲法が保障する生存権の理念にも関連する措置です。
Q2. 基礎控除と配偶者控除は同時に適用できますか?
はい、それぞれの適用要件を満たしていれば、基礎控除と配偶者控除(または配偶者特別控除)を同時に受けることが可能です。
同様に、医療費控除や生命保険料控除など、他の所得控除とも併用できます。
各控除は独立した制度であり、要件を満たす限り組み合わせて申告することができます。
Q3. 年末調整や確定申告で基礎控除の申告を忘れたらどうなりますか?
申告を忘れると控除が適用されず、所得税や住民税を本来より多く納めることになります。
会社員の場合は、会社の担当者に依頼して再年末調整をしてもらうか、自身で確定申告(還付申告)を行うことで払い過ぎた税金の還付を受けられます。
還付申告は5年以内であれば提出可能です。
まとめ
本記事では、2026年(令和8年)分から適用される基礎控除の改正点を中心に解説しました。
所得税の基礎控除は、合計所得金額が489万円以下の場合に最大104万円に引き上げられますが、住民税は43万円で据え置かれる点や、所得に応じた控除額の変動など、変更点は多岐にわたりります。
特に、社会保険料と基礎控除を合わせた約178万円が、税負担の分岐点となるケースがあることも考慮する必要があります。
会社員は年末調整、個人事業主は確定申告で正しく手続きを行い、自身の所得に応じた控除を確実に受けることが重要です。
このまとめを参考に、改正内容を正しく理解し、ご自身の税額計算に役立ててください。


