仕事に必要な専門書やビジネス書を購入したとき、「この本は経費にできる?」「勘定科目は新聞図書費でいい?」と迷う個人事業主の方は少なくありません。
本代は、事業のために必要な支出であることを説明できれば必要経費にできる可能性があります。 専門書だけでなく、職種によっては漫画・小説・写真集などが経費になるケースもあります。
一方で、「仕事にも少し役立ちそう」というだけで、プライベートの読書代まで経費にできるわけではありません。
この記事では、本代を経費にできる判断基準から、新聞図書費・研修費・福利厚生費などの勘定科目、具体的な仕訳例、高額な書籍を購入した場合の処理までわかりやすく解説します。
本代以外も含めて「どこまで経費にできるのか」を確認したい方は、 個人事業主の経費の判断基準を解説した関連記事 もあわせてご確認ください。
まず結論
- 仕事に必要な本なら必要経費にできる
- 基本の勘定科目は「新聞図書費」
- 勘定科目には法律上決められた正解が1つあるわけではない
- 漫画や小説でも業務上必要なら経費になる場合がある
- 趣味・娯楽など私生活のための本は経費にできない
- 高額な全集などは金額や使用状況によって資産処理が必要になる
本代を経費に計上できるかの判断基準
個人事業主の必要経費になるのは、収入を得るために直接必要な費用や、その年に生じた販売費・一般管理費などの業務上の費用です。
つまり、本のジャンルだけで「経費になる・ならない」が決まるわけではありません。 自分の事業とどのような関係があるのかが重要です。
事業との関連性を具体的に説明できるかが重要
例えば、Webエンジニアがプログラミングの専門書を購入した場合であれば、業務との関係は比較的説明しやすいでしょう。
一方、漫画、小説、自己啓発本などは私生活でも購入する可能性があるため、 「何の仕事に使ったのか」「なぜこの本が必要だったのか」 を具体的に説明できることが重要です。
摘要欄の記載例
「〇〇社Webサイト制作・デザイン参考資料」
「飲食店向け記事制作の取材資料」
「SEO業務の情報収集用専門書」
本のタイトルだけでは用途が分かりにくい場合は、会計ソフトの摘要欄などに購入目的を残しておくと、後から確認しやすくなります。
プライベートの読書代は経費にならない
事業と関係なく、純粋に趣味や娯楽のために購入した本は必要経費にはできません。
例えば、仕事とは関係のない小説、趣味として読む漫画、個人的な旅行のためのガイドブックなどは、原則として家事費となります。
「少し仕事にも役立つ」だけでは不十分です。
私生活上の目的が中心の本を経費にする場合、「何となく勉強になった」「経営者として成長するため」といった抽象的な説明だけでは、事業上必要な支出だったことを説明しにくくなります。
【一覧】経費になりやすい本・判断に注意が必要な本
| 本の種類 | 経費の考え方 | 具体例 |
|---|---|---|
| 業務の専門書 | 経費にしやすい | 税務書籍・IT技術書・法律書など |
| 業界誌・専門誌 | 経費にしやすい | 不動産・美容・建設・飲食業界誌など |
| 一般新聞 | 業務との関係次第 | 仕事上の情報収集に継続利用する場合など |
| 漫画・写真集 | 用途の説明が必要 | デザイン・撮影・制作資料など |
| 小説 | 職種によって可能 | 作家・ライターの研究資料など |
| 自己啓発本 | 慎重に判断 | 具体的な業務上の必要性を説明できる場合 |
| 趣味・娯楽の本 | 原則経費にならない | 個人的に楽しむ漫画・小説など |
【ジャンル別】本代はどこまで経費にできる?
専門書・ビジネス書
業務に直接利用する専門書は、事業との関連性が分かりやすいため必要経費にしやすい書籍です。
例えば、ITエンジニアのプログラミング本、税理士の税法書籍、Webマーケターの広告・SEO関連書籍などが考えられます。
ただし、「ビジネス書」というジャンルだけで自動的に経費になるわけではなく、自分の業務に必要だったかで判断します。
新聞・業界紙・専門誌
業界動向や専門情報を継続的に取得するための業界紙・専門誌は、事業用として説明しやすい支出です。
一般紙についても、仕事上の情報収集として必要であることを説明できる場合は経費になる可能性があります。
ただし、家庭でも日常的に読んでいるなど私生活上の利用が含まれる場合は、事業用と家事用を明確に区分できるかという点も検討する必要があります。
漫画・写真集
漫画や写真集だから経費にできない、というルールはありません。
例えば、イラストレーターが表現や構図の資料として漫画を購入したり、カメラマンが撮影技術の研究用として写真集を購入したりする場合は、業務との関連性を説明できる可能性があります。
ただし趣味との境界が曖昧になりやすいため、具体的な案件や制作物との関係を記録しておくとよいでしょう。
ライター・作家が読む小説
ライターや作家などの場合、小説が表現方法・構成・文章技術などを研究する資料になるケースがあります。
例えば、「〇〇ジャンルの記事執筆資料」「シナリオ制作の参考資料」など、具体的な仕事との関係を説明できるのであれば、必要経費として扱える可能性があります。
自己啓発本
自己啓発本は、専門書と比べると慎重な判断が必要です。
「モチベーションを上げるため」「人間として成長するため」といった個人的な目的だけでは、事業上の必要経費であることを説明しにくいでしょう。
一方、具体的な業務や研修に使用するなど、事業上の必要性を客観的に説明できるケースであれば、一律に対象外というわけではありません。
本代の勘定科目は何を使う?
本代には「必ずこの勘定科目を使わなければならない」という1つの決まりがあるわけではありません。
実務では「新聞図書費」が最も分かりやすいですが、購入目的などによって研修費や福利厚生費などを使用する場合があります。
| 勘定科目 | 使うケース |
|---|---|
| 新聞図書費 | 業務用の本、新聞、雑誌、電子書籍など |
| 研修費 | 研修・セミナーで使用する教材など |
| 福利厚生費 | 従業員全体の福利厚生目的で設置する書籍など |
| 消耗品費 | 自社の経理ルール上、少額の書籍を消耗品として統一している場合など |
| 雑費 | 購入頻度が低く、独立した科目を設けるほどではない少額の支出など |
ポイント
重要なのは勘定科目の名称そのものよりも、取引の内容を正しく記録することです。同じ性質の書籍購入については、毎年なるべく同じルールで処理すると帳簿も分かりやすくなります。
高額な本・全集を買った場合は減価償却が必要?
通常の書籍は数千円程度であることが多いため、その年の必要経費として処理するケースが一般的です。
一方、高額な専門資料や全集などで、1年以上にわたり事業で使用する資産性のあるものは、取得価額によって減価償却資産としての処理を検討する必要があります。
10万円未満なら原則その年の経費
使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満の減価償却資産は、原則として業務に使用した年の必要経費にできます。
10万円以上20万円未満は「一括償却資産」も選択できる
取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、一定の要件のもと、3年間にわたって取得価額の3分の1ずつを必要経費にする「一括償却資産」の制度を選択できます。
2026年4月から青色申告者の特例は「40万円未満」に拡大
2026年の重要な変更
一定の中小事業者に該当する青色申告者については、少額減価償却資産の特例があります。
2026年4月1日以後に取得等した資産は、対象となる取得価額が「40万円未満」に引き上げられました。
一定の要件を満たせば、年間合計300万円を上限として取得価額をその年の必要経費にできる制度です。
2026年3月31日までに取得した資産については、従来の30万円未満という基準が使われます。
なお、「本が1冊ずつ売られているから必ず1冊ずつ金額判定する」とは限りません。 税務上は、通常1単位として取引される単位で取得価額を判定します。 全集など一式で取引されるものについては、セット全体を1単位として考える可能性があります。
高額書籍のポイント
「10万円を超えたから絶対に数年かけて減価償却」というわけではありません。取得価額、購入時期、青色申告の有無、適用する制度によって処理が変わります。
パソコンや高額な備品など、書籍以外の資産を購入した場合の処理も確認したい方は、 高額な経費と減価償却の考え方を解説した関連記事 も参考にしてください。
【ケース別】本代の具体的な仕訳例
業務用の技術書3,000円を現金で購入
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 新聞図書費 | 3,000円 | 現金 | 3,000円 |
摘要欄には「プログラミング技術書・〇〇案件参考資料」など、内容が分かる記載をしておくとよいでしょう。
事業用クレジットカードでKindle本1,500円を購入
購入時
| 新聞図書費 | 1,500円 | 未払金 | 1,500円 |
カード利用代金の引落時
| 未払金 | 1,500円 | 普通預金 | 1,500円 |
一方、個人事業主がプライベートのクレジットカードで事業用の本を購入した場合は、購入時に貸方を「事業主借」として処理する方法があります。
| 新聞図書費 | 1,500円 | 事業主借 | 1,500円 |
従業員用の雑誌を購入した場合
従業員が休憩室などで自由に読める雑誌を、従業員全体の福利厚生を目的として購入した場合は、「福利厚生費」で処理することがあります。
| 福利厚生費 | 12,000円 | 普通預金 | 12,000円 |
ただし、個人事業主本人のリフレッシュ目的の本代を「自分の福利厚生費」として経費計上することはできません。
本代を経費にするときの4つの注意点
① 購入目的を記録しておく
本代は、仕事用と私生活用の区別が見た目だけでは分かりにくいことがあります。
特に漫画・小説・自己啓発本などを業務資料として使用する場合は、会計ソフトの摘要欄などに用途を記録しておくとよいでしょう。
② レシートや領収書を保存する
書籍を購入した際のレシートや領収書などは保存しておきます。 本のタイトルがレシートから分からない場合は、必要に応じて摘要欄などに書名や用途を記録しておきましょう。
③ Kindleなどの電子購入は電子データの保存にも注意
Amazonなどインターネット上で電子書籍や書籍を購入し、領収書・請求書などを電子データで受け取った場合は、電子帳簿保存法の「電子取引」に該当する場合があります。
電子取引として受領した領収書等については、必要な電子データを保存できるようにしておきましょう。
ネット購入の場合
領収書PDFや購入履歴などを「あとでサイトから見ればいい」と放置せず、必要な取引データを適切に保存しておくことが大切です。
Amazonやネットショップで受け取った領収書などは、電子帳簿保存法のルールに沿って保存する必要があります。 領収書PDFや購入履歴などの電子データを、適切に保存しておきましょう。
④ 年間購読の前払いは契約内容を確認する
雑誌・新聞・オンライン情報サービスなどを年間契約で前払いした場合は、契約内容や提供されるものの性質によって会計処理が変わることがあります。
翌年分に対応する金額について、前払費用などとして処理する必要がある場合もあります。
なお、税務上の「短期前払費用」の取扱いは、一定の契約に基づいて継続的に役務の提供を受ける費用についての制度です。 年間購読料だから自動的に全額を支払年の経費にできるわけではありません。
本代の経費に関するよくある質問
Q. 本代は基本的に何の勘定科目にすればいいですか?
業務に必要な本であれば「新聞図書費」が分かりやすいでしょう。ただし、勘定科目が法律で一つに決められているわけではないため、目的に応じて研修費などを使用することもあります。
Q. 漫画や小説も経費にできますか?
漫画や小説であっても、業務上必要な資料であり、その必要性を具体的に説明できる場合は必要経費になる可能性があります。単に趣味として読んでいる場合は経費にはできません。
Q. Kindleなどの電子書籍も経費になりますか?
はい。紙か電子書籍かではなく、事業に必要な支出かどうかで判断します。業務に必要な電子書籍なら新聞図書費などで処理できます。
Q. 自己啓発本は経費になりますか?
一律にNGではありませんが、一般的な教養や個人的な成長を目的としたものは家事費と判断されやすくなります。具体的な業務上の必要性を説明できるかで判断してください。
Q. 10万円を超える本はすべて減価償却しなければいけませんか?
必ずしもそうではありません。10万円以上20万円未満なら一括償却資産を選択できる場合があり、一定の青色申告者については少額減価償却資産の特例もあります。2026年4月1日以後に取得等した対象資産については、この特例の取得価額基準が40万円未満に引き上げられています。
Q. 領収書に本のタイトルが書いていなくても大丈夫ですか?
領収書などの証憑とあわせて、会計ソフトの摘要欄などに書名や購入目的を記録しておくと、後から事業との関連性を確認しやすくなります。
本代が経費になるか迷ったら「本の種類」ではなく用途で判断しよう
本代を必要経費にできるかどうかで最も重要なのは、 その書籍が事業のために必要だったことを説明できるかです。
専門書であっても個人的な勉強のためだけに購入したのであれば経費にならない可能性があります。 反対に、漫画や小説でも具体的な業務の資料として必要であれば、経費として認められる可能性があります。
また、一般的な書籍購入では新聞図書費を使用すると分かりやすいですが、研修費や福利厚生費など、支出目的に合った科目を使うこともできます。
本代以外の支出も含めて、個人事業主の経費の基本ルールを確認したい方は、 タクバツの経費ガイド もご活用ください。
経費の判断も確定申告も丸投げしたい方へ
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「この本は経費になる?」といった税務上の疑問も相談できます。
参考:国税庁・財務省の公式情報
※本記事は2026年9月時点の法令・国税庁および財務省の公表情報をもとに作成しています。個別の経費該当性や会計処理は、事業内容・利用目的・取得状況などによって異なります。

