年金受給者になったとき、多くの人が疑問に思うのが「確定申告は必要か」という点です。
確定申告とは、1年間の所得を計算して税金を納める手続きのことで、年金も課税対象の所得に含まれます。
しかし、年金受給者の場合は、申告が不要になる制度や、申告すれば払いすぎた税金の還付を受けられるケースがあります。
自分は対象者なのか、申告すると損しないかを確認し、適切な手続きを行いましょう。
年金の確定申告、まずは必要か不要かを確認しよう
年金収入があるからといって、すべての人が確定申告をしなければならないわけではありません。
まずは、自分が確定申告をする必要があるのか、それとも不要なのかを確認することが最初のステップです。
年金の収入金額やそれ以外の所得金額によって要否が分かれるため、自身の状況を整理することが大切です。
この記事では、確定申告が必要か不要かを判断するための条件を、チャートを見るようにわかりやすく解説していきます。
原則として年金受給者も確定申告が求められる
公的年金は所得税法上の「雑所得」に分類され、課税対象となるため、原則として年金受給者は確定申告をする義務があります。
年金からはあらかじめ所得税が源泉徴収されていますが、その金額は各種控除が反映されていない概算です。
そのため、確定申告を通じて年間の所得と税額を正しく計算し、過不足を精算する必要があります。
これは繰り上げ受給や繰り下げ受給をしている高齢者も同様です。
ただし、年齢が65歳以上か65歳未満かによって公的年金等控除額が異なるため、納税額に違いが出ます。
【条件】確定申告が不要になる「確定申告不要制度」とは
原則として確定申告が必要ですが、年金受給者の負担を軽減するために「確定申告不要制度」という例外的な仕組みが設けられています。
この制度は、特定の要件を満たす場合に限り、所得税の確定申告を不要とするものです。
多くの年金受給者はこの制度の対象となる可能性があります。
主に、受け取る公的年金の金額と、年金以外の所得が基準となります。
自分がこの申告不要の制度に当てはまるかどうか、次の項目で具体的な要件を確認しましょう。
あなたはどっち?確定申告が不要になる2つの条件
確定申告が不要になるのは、以下の2つの条件を「両方とも」満たす場合です。
1.公的年金等(国民年金、厚生年金、企業年金など)の収入金額の合計が400万円以下であること。
2.公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(給与所得、個人年金、不動産所得など)が20万円以下であること。
例えば、年金収入が300万円のみで他の所得がない方や、年収が150万円でアルバイト所得が10万円といった60歳以上の方も、この条件に当てはまれば申告は不要です。
年金収入が100万以下や110万、120万、130万といった金額の方も多くが該当します。
こんな人は確定申告が必要!具体的な4つのケース
「確定申告不要制度」の条件に当てはまらない人は、確定申告が必要です。
特に、複数の収入源がある方は注意が必要です。
例えば、年金をもらいながら働くサラリーマンや、個人事業主として青色申告・白色申告をしている場合などが該当します。
ここでは、確定申告をしないといけない具体的なケースを4つに分けて解説します。
自分の状況が当てはまるか確認し、申告漏れがないようにしましょう。
公的年金等の収入が年間400万円を超える場合
確定申告不要制度の条件の一つに「公的年金等の収入が年間400万円以下」であることが挙げられます。
したがって、老齢基礎年金や老齢厚生年金といった公的年金等の収入合計が年間で400万円を1円でも超える場合は、確定申告が必要です。
複数の種類の公的年金等を受け取っている場合は、それらの収入をすべて合算した金額で判断します。
源泉徴収票に記載されている「支払金額」を確認し、合計額を計算してください。
年金以外の所得が年間20万円を超える場合
公的年金等の収入が400万円以下であっても、それ以外の所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。
この「所得」には、給与所得(アルバイトや再雇用など)、不動産所得、個人事業による事業所得、株式の配当金などの配当所得、生命保険の一時所得などが含まれます。
給与収入から給与所得控除を差し引いた給与所得と、他の所得の合計が20万円を超えるかを確認します。
年末調整済みの給与所得者でも、副業などで所得があれば合算して判断します。
個人事業主は必要経費を差し引いた後の金額で計算します。
外国で年金を受け取っている場合
日本の公的年金に加えて、外国の制度に基づいた年金を受け取っている場合、原則として確定申告が必要です。
日本の所得税は、国内で得た所得だけでなく海外で得た所得も合算して計算する「総合課税」が原則だからです。
ただし、日本とその国との間で「租税条約」が結ばれている場合は、取り扱いが異なることがあります。
条約の内容によって税率や納税額の計算が変わるため、事前に税務署や専門家に確認することをおすすめします。
源泉徴収の対象外である公的年金等を受け取っている場合
公的年金は所得税が源泉徴収されますが、一部の年金は徴収の対象外です。
例えば、企業年金連合会から支払われる年金の一部や、海外の年金などが該当します。
これらの源泉徴収されていない年金を受け取っている場合は、確定申告をして自分で所得税を納める必要があります。
なお、個人年金保険(民間の保険)の満期金や、iDeCo(個人型確定拠出年金)を一時金で受け取る場合も雑所得や一時所得として申告が必要になることがあります。
遺族年金や障害年金は非課税のため申告は不要です。
確定申告が不要でも申告した方が得する!還付金が受けられるケース
確定申告の義務がない方でも、あえて申告をすることで、払いすぎていた税金が戻ってくる「還付申告」というメリットがあります。
年金から天引きされている源泉徴収税額は、各種控除が適用されていない概算の金額です。
そのため、医療費控除や生命保険料控除などを適用できる場合、確定申告をすれば税金が再計算され、差額が還付金として戻ってくる可能性があります。
いくら戻るかは、適用する控除の種類や金額によって異なります。
【あわせて読みたい:基礎知識編】
税金が戻ってくる「控除」の種類や仕組みについて、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
10万円以上の医療費を支払った(医療費控除)
1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費の合計が10万円(または総所得金額等の5%)を超える場合、医療費控除を適用できます。
この医療費には、生計を同一にする配偶者や親族のために支払った医療費も含まれます。
治療費や薬代だけでなく、通院のための交通費なども対象になる場合があります。
医療費の支払いを証明する領収書などを基に「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書に添付して提出します。
生命保険料や地震保険料を支払った(生命保険料控除など)
生命保険や介護医療保険、個人年金保険の保険料を支払っている場合、生命保険料控除が適用されます。
同様に、地震保険料を支払っていれば地震保険料控除の対象となります。
また、年金から天引きされている国民健康保険料や介護保険料とは別に、自身で支払った分がある場合、その全額が社会保険料控除の対象です。
これらの控除を受けるには、保険会社から送られてくる「控除証明書」や、支払いを証明する書類が必要となります。
ふるさと納税などの寄付をした(寄付金控除)
応援したい自治体などに寄付ができる「ふるさと納税」を行った場合、寄付金控除を受けることで所得税や住民税が軽減されます。
年金受給者の方で、給与所得者などが利用できる「ワンストップ特例制度」を申請していない場合は、確定申告が必要です。
寄付先の自治体から送られてくる「寄附金受領証明書」を基に申告を行うことで、自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となります。
家族を扶養に追加した(扶養控除)
年金受給の際に提出する「扶養親族等申告書」を出し忘れたり、年の途中で扶養する家族が増えたりした場合は、確定申告で扶養控除や配偶者控除を適用できます。
例えば、所得が一定額以下の配偶者や、16歳以上の親・子どもを扶養している場合が対象です。
夫婦の一方が年金受給者で、もう一方を扶養に入れるケースなどが考えられます。
控除を適用することで、課税対象となる所得が減り、税金の還付につながります。
住宅ローンを利用して家を購入・リフォームした(住宅ローン控除)
住宅ローンを利用してマイホームの新築、購入、または増改築などをした場合、「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」が受けられる可能性があります。
この控除は、年末のローン残高に応じて、一定期間にわたり所得税額から直接差し引かれるものです。
年金収入のみの方でも、所得税が源泉徴収されていれば、確定申告をすることでこの控除の適用を受け、税金の還付が見込めます。
災害や盗難で資産に損害を受けた(雑損控除)
台風や地震などの自然災害、火災、または盗難や横領によって、住宅や家財といった生活に必要な資産に損害を受けた場合、雑損控除を受けられることがあります。
この控除を適用することで、所得金額から一定の控除額が差し引かれ、税負担が軽減されます。
損害額が大きく、その年の所得金額から控除しきれない場合は、翌年以降3年間にわたって繰り越すことも可能です。
これは基礎控除などとは別に適用されます。
年金の確定申告、具体的な手続きと必要書類
確定申告が必要な方や、還付申告をしたい方が次に行うのは、具体的な手続きです。
申告のやり方は、必要書類を揃えて確定申告書を作成し、税務署に提出するという流れになります。
ここでは、手続きの全体像から、申告書の書き方や税金の計算方法、必要なもの、郵送での提出方法まで、一連の手順をわかりやすく解説します。
事前に準備すべき書類を把握し、スムーズに申告を終えられるようにしましょう。
確定申告の手続きは3ステップで完了
年金の確定申告は、大きく分けて3つの手順で進めます。
必要書類の準備:「公的年金等の源泉徴収票」や、各種控除を受けるための証明書類などを集めます。
マイナンバーがわかる書類と本人確認書類も必要です。
確定申告書の作成:国税庁のウェブサイト「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の案内に沿って入力するだけで簡単に作成できます。
手書きや会計ソフトで作成する方法もあります。
申告書の提出:作成した申告書を、所轄の税務署に郵送または持参するか、e-Tax(電子申告)で送信します。
必ず準備すべき「公的年金等の源泉徴収票」
年金の確定申告において、最も基本となる必要書類が「公的年金等の源泉徴収票」です。
これは、その年に支払われた年金の総額や、源泉徴収された所得税額が記載された通知で、毎年1月ごろに日本年金機構などから郵送されます。
確定申告書を作成する際には、この源泉徴収票の見方を確認し、記載されている金額を正確に転記する必要があります。
もし紛失した場合は、年金の支払元に連絡すれば再発行が可能です。
各種控除の適用に必要な証明書類一覧
還付申告などで所得控除を受けるためには、支払いを証明する書類の提出または保管が必要です。
主に以下のような証明書や領収書を準備します。
医療費控除:医療費の領収書を基に作成した「医療費控除の明細書」
社会保険料控除:国民健康保険料や介護保険料の納付額がわかる証明書や領収書
生命保険料控除、地震保険料控除:保険会社から送付される「控除証明書」
寄付金控除:寄付先から発行される「寄附金の受領証」
これらの書類を確定申告書に添付、または手元に5年間保管します。
自宅で完結!スマホやパソコンでのe-Tax申請が便利
確定申告は、税務署に行かなくても自宅のパソコンやスマートフォンからオンラインで完結できる「e-Tax(電子申告)」が便利です。
e-Taxを利用するには、マイナンバーカードと、それを読み取るためのスマホまたはICカードリーダライタが必要です。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」というウェブサイトやアプリを使えば、画面の指示に従って入力するだけで電子申告用のデータが作成できます。
マイナポータルと連携すれば、控除証明書などのデータを自動で取得・入力することも可能です。
注意!所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要なケースとは
「確定申告不要制度」に該当し、所得税の確定申告をしなかった場合でも、市区町村へ住民税の申告が別途必要になるケースがあるため注意が必要です。
例えば、公的年金以外の所得が20万円以下で所得税の申告は不要でも、住民税ではその所得も申告しなくてはなりません。
また、確定申告をしないと、扶養控除や医療費控除などの情報が市区町村に伝わらず、住民税額の計算で不利になる可能性があります。
各種控除を住民税に反映させたい場合は、住民税の申告が必要です。
年金の確定申告に関するよくある質問
ここでは、年金の確定申告について多くの人が疑問に思う点をQ&A形式で解説します。
申告手続きでわからないことがあったり、自分のケースで判断に迷ったりした際の参考にしてください。
定額減税など、最新の税制に関するデータや情報も重要になります。
もし、個別の具体的な内容で相談したい場合は、管轄の税務署や税理士などの専門家に問い合わせるのが確実です。
Q. 確定申告をしないとどうなりますか?
申告義務があるにもかかわらず確定申告をしなかった場合、ペナルティとして本来納めるべき税額に加え、「無申告加算税」や「延滞税」といった追加納税が発生する可能性があります。
税務署の調査で発覚すると、より重い加算税が課されることもあるため、申告が必要な場合は必ず期限内に手続きをしましょう。
Q. アルバイト収入は「年金以外の所得」に含まれますか?
はい、含まれます。
アルバイトによる収入は「給与所得」に該当し、確定申告不要制度の要件である「公的年金等に係る雑所得以外の所得」の一部です。
年金を受給しながら給与所得者として働いている場合、この給与所得の金額が年間20万円を超えると、公的年金等の収入が400万円以下であっても確定申告が必要になります。
Q. 確定申告の期間はいつからいつまでですか?
所得税の確定申告の期間は、原則として対象となる年の翌年2月16日から3月15日までです。
例えば、令和6年(2024年)分の申告期間は、2025年2月17日(月)から3月17日(月)です。
ただし、医療費控除などで税金の還付を受けるための「還付申告」は、翌年1月1日から5年間提出できます。
まとめ
年金受給者の確定申告は、まず「公的年金等の収入が400万円以下」かつ「それ以外の所得が20万円以下」という確定申告不要制度の条件に当てはまるかを確認することが重要です。
申告義務がない場合でも、医療費控除や生命保険料控除などを受けられる方は、還付申告をすることで税金が戻ってくる可能性があります。
手続きや判断に迷った際は、国税庁のウェブサイトで調べるか、所轄の税務署に相談してください。


