確定申告で赤字なら申告は不要?メリット・デメリットと書き方

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個人事業主やフリーランスとして事業を行う中で、思うように売上が伸びず、経費が収入を上回って赤字になることは珍しくありません。
確定申告で赤字の場合、所得税は発生しないため「申告は不要なのでは?」と考えるかもしれません。
この記事では、確定申告が赤字のときに申告が不要かどうか、そして手続きすることで得られるメリットや、しない場合のデメリット、具体的な書き方はどのようなものかを解説します。

マイナスになったときの正しい対応を知り、ご自身の状況に合わせた判断の参考にしてください。

  1. 確定申告で赤字の場合、申告を行う義務は原則としてない
  2. 【結論】義務はなくても赤字の確定申告をすべき5つのメリット
    1. メリット1:翌年以降の黒字と相殺して節税できる「損失の繰越控除」
    2. メリット2:給与所得など他の所得と合算して税負担を軽減する「損益通算」
    3. メリット3:前年に納めた税金が還付される「繰戻し還付」
    4. メリット4:源泉徴収された報酬がある場合に還付金を受け取れる
    5. メリット5:国民健康保険料の算定で軽減措置が適用される
  3. 赤字で確定申告しない場合の3つのデメリット
    1. デメリット1:所得証明書や非課税証明書が発行できなくなる
    2. デメリット2:ローンや融資、賃貸契約などの審査に影響が出る
    3. デメリット3:国民年金の免除申請や各種給付金の手続きができない
  4. 【青色・白色別】赤字の確定申告で必要な書類と書き方のポイント
    1. 青色申告:確定申告で赤字の繰越・繰戻しが可能
    2. 白色申告:赤字の繰越はできないが損益通算はできる
    3. 確定申告書「第四表(損失申告用)」の具体的な記入方法
  5. 確定申告が赤字の際に注意すべき2つのポイント
    1. 赤字決算が続くと銀行からの融資審査で不利になる可能性がある
    2. 不自然な経費計上は税務調査の対象となるリスクがある
  6. 確定申告の赤字に関するよくある質問
    1. Q. 確定申告で赤字の場合、申告をしなくても罰則はありませんか?
    2. Q. 副業の事業所得が赤字です。給与所得と損益通算できますか?
    3. Q. 2年連続で赤字を申告しても問題ありませんか?
  7. まとめ

確定申告で赤字の場合、申告を行う義務は原則としてない

事業所得や不動産所得などが赤字、つまり所得がマイナスになった場合、課税対象となる所得金額は0円となるため、所得税は発生しません。
したがって、原則として確定申告を行う義務は無くなります。

手続きをしないからといって、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されることもありません。
しかし、申告義務がない場合でも、あえて確定申告を行うことで多くのメリットを受けられる可能性があります。

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【結論】義務はなくても赤字の確定申告をすべき5つのメリット

確定申告の義務がないからといって、申告しないという選択は早計かもしれません。
実は、赤字でも確定申告をすることで、将来の節税につながったり、納めすぎた税金が戻ってきたりと、金銭的なメリットを受けられるケースが多くあります。

ここでは、損失の申告によって得られる代表的な5つのメリットについて、具体的に解説していきます。
これらのメリットを理解し、手続きすべきかどうかを判断することが重要です。

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税金が安くなる「控除」の基本的な仕組みや種類については、こちらで詳しく解説しています。

控除とは?所得控除や税額控除の種類一覧と税金が安くなる仕組みをわかりやすく解説

メリット1:翌年以降の黒字と相殺して節税できる「損失の繰越控除」

青色申告を行っている場合、その年に生じた損失の金額(純損失)を、翌年以降最大3年間にわたって繰り越せる「純損失の繰越控除」という制度があります。
この制度を利用すれば、翌年以降に黒字が出た際に、過去のマイナス分と黒字を相殺して課税所得を圧縮できます。

結果として、将来の所得税や住民税、国民健康保険料の負担を軽減することにつながります。
この適用を受けるためには、赤字になった年も含めて毎年連続で確定申告を続ける必要があります。

メリット2:給与所得など他の所得と合算して税負担を軽減する「損益通算」

損益通算とは、事業所得や不動産所得などで生じた損失を、給与所得や雑所得といった他の黒字の所得と合算できる制度です。
例えば、会社員やサラリーマンが副業として行っている事業でマイナスが出た場合、その分を本業の給与所得から差し引くことができます。

全体の課税所得額が減るため、給与から源泉徴収されていた所得税の一部が還付される可能性があります。
この損益通算は、青色申告者だけでなく白色申告者も利用できます。

メリット3:前年に納めた税金が還付される「繰戻し還付」

青色申告者限定の制度として、前年は黒字で所得税を納税し、本年が赤字になった場合に適用できる「純損失の繰戻し還付」があります。
これは、本年の損失額を前年の黒字所得に繰り戻して相殺し、それによって減額された前年分の所得税の還付を請求できる制度です。

資金繰りが厳しい場合に早期に還付金を受け取れるメリットがありますが、この制度を利用すると翌年以降の繰越控除は使えません。
どちらか有利な方を選択する必要があります。

メリット4:源泉徴収された報酬がある場合に還付金を受け取れる

フリーランスのデザイナーやライターなどの業務では、報酬の支払い時にあらかじめ所得税(及び復興特別所得税)が源泉徴収されている場合があります。
この源泉徴収は、年間で所得があることを前提に天引きされている税金の前払いです。
しかし、年間の収支を計算した結果、最終的に事業が赤字になった場合、本来納めるべき所得税は0円です。

そのため、確定申告を行うことで、すでに支払った源泉徴収税額の全額が還付金として戻ってきます。

メリット5:国民健康保険料の算定で軽減措置が適用される

国民健康保険料や住民税は、前年の総所得金額などを基に計算されます。
もしマイナスであるにもかかわらず確定申告をしないと、自治体は所得を正確に把握できません。
その結果、所得が低い世帯を対象とした国民健康保険料の軽減措置が適用されず、本来よりも高い保険料を請求される可能性があります。

確定申告で赤字を報告することで所得が低いことが証明され、保険料が適正に算定されるだけでなく、軽減措置の対象になる場合があるのです。

赤字で確定申告しない場合の3つのデメリット

確定申告をする義務がないからと、手続きをしない選択をすると、税金面以外で思わぬ不利益を被ることがあります。
ここでは、申告をしなかった場合に生じる可能性のある、生活に直結する3つのデメリットについて解説します。
これらのリスクを理解した上で、どうするかを判断することが重要です。

特に、各種手続きや契約を控えている場合は注意が必要となります。

デメリット1:所得証明書や非課税証明書が発行できなくなる

所得証明書や課税(非課税)証明書は、確定申告書や住民税の申告内容に基づいて市区町村が発行する公的な書類です。
手続きを行わないと、自治体は所得額を把握できないため、これらの証明書を発行することができません。

所得証明書は、融資の申し込みや賃貸契約、子どもの保育園の入園手続きなど、生活の様々な場面で提出を求められます。
必要なときに証明書が取得できず、手続きが進められなくなる可能性があります。

デメリット2:ローンや融資、賃貸契約などの審査に影響が出る

住宅ローンや自動車ローン、日本政策金融公庫などからの事業融資を申し込む際には、返済能力を証明するために所得証明書の提出が必須です。
確定申告をしていないと、この所得証明書が発行されないため、ローンの審査を受けること自体が難しくなります。
また、賃貸住宅の入居審査においても、家賃の支払い能力を示すために所得証明を求められることが一般的です。

申告をしていないことが、これらの重要な契約の機会を逃す原因になり得ます。

デメリット3:国民年金の免除申請や各種給付金の手続きができない

所得が少なく国民年金保険料の支払いが困難な場合、申請によって保険料の全額または一部が免除されたり、納付が猶予されたりする制度があります。
この免除申請の手続きには、所得が低いことを証明する書類が必要です。

確定申告をしていないと所得の証明ができず、免除申請が認められない可能性があります。
同様に、国や自治体が提供する各種給付金や助成金の手続きにおいても、所得証明ができないことで対象外となる場合があります。

【青色・白色別】赤字の確定申告で必要な書類と書き方のポイント

確定申告を行うことを決めたら、次は具体的な手続きを進める必要があります。
申告のやり方は、事前に開業届を提出し、青色申告承認申請書を提出している「青色申告」か、それ以外の「白色申告」かによって、受けられるメリットや必要書類が異なります。

ここでは、それぞれの申告方法で必要な書類や、赤字の申告特有の書類の書き方のポイントを解説します。
e-Taxまたは郵送などで、期限内に提出しましょう。

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個人事業主の確定申告の全体像や、具体的な進め方を網羅的に知りたい方はこちらがおすすめです。

個人事業主の確定申告完全ガイド

青色申告:確定申告で赤字の繰越・繰戻しが可能

青色申告の最大のメリットは、損失を最大3年間繰り越せる「純損失の繰越控除」や、前年の黒字と相殺して還付を受けられる「繰戻し還付」が利用できる点です。
これにより、将来的な節税効果が期待できます。
マイナスを申告する場合、通常の「確定申告書B」「青色申告決算書」に加え、「確定申告書第四表(損失申告用)」の提出が必要です。

第四表で、損失の金額を翌年以降に繰り越すか、前年分からの繰戻し還付を受けるかを選択して記入します。
最大65万円の青色申告特別控除も魅力です。

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最大65万円の特別控除など、青色申告の大きなメリットや条件について確認したい方はこちら。

青色申告とは?65万円控除の条件・メリット・やり方を完全解説

白色申告:赤字の繰越はできないが損益通算はできる

白色申告の場合、青色申告のような損失の繰越控除や繰戻し還付の制度は利用できません。
したがって、その年のマイナスを翌年以降の黒字と相殺することは不可能です。

ただし、副業の事業所得が赤字で、本業で給与所得がある場合など、他の黒字所得とマイナス分を相殺する「損益通算」は可能です。
白色申告で提出する際に必要な書類は、主に「確定申告書B」と「収支内訳書」です。

損益通算を行う場合は、確定申告書Bの所定の欄に各所得を記入して計算します。

確定申告書「第四表(損失申告用)」の具体的な記入方法

第四表は、赤字(純損失)の金額を計算し、その損失を翌年以降に繰り越すか、前年に繰り戻して還付を受けるかを申告するための書類です。
具体的な記入例として、まず青色申告決算書で計算したマイナスの金額(所得金額)を第四表の「本年分の損失額」の欄に転記します。

次に、「損失額のうち翌年以後に繰り越す損失額」の欄に同じ金額を記入することで、繰越控除の意思表示となります。
繰戻し還付を選ぶ場合は、還付請求額などを計算して所定の欄に記入します。

確定申告が赤字の際に注意すべき2つのポイント

損失の申告には多くのメリットがありますが、注意すべき点も存在します。
特に、マイナスが続いてしまう場合や、経費計上に不自然な点がある場合は、金融機関や税務署から厳しい目で見られる可能性があります。

ここでは、申告を行う際に留意しておくべき2つの重要なポイントについて解説します。
メリットだけでなく、これらの注意点も理解した上で、適切な処理を心がけることが大切です。

赤字決算が続くと銀行からの融資審査で不利になる可能性がある

事業拡大などのために銀行からの融資を検討している場合、マイナス決算は審査において不利に働く可能性があります。
単発の損失であれば、その理由を合理的に説明できれば大きな問題にならないこともあります。

しかし、2期、3期と連続すると、事業の将来性や返済能力に疑問符が付き、融資を受けるのが難しくなる傾向があります。
マイナスが続く場合は、なぜなのか、今後どのように改善していくのかを明確に示した事業計画書を用意することが重要です。

不自然な経費計上は税務調査の対象となるリスクがある

売上に対して経費が不自然に多い場合や、事業との関連性が薄い支出を経費として計上している場合、税務署から意図的な所得操作を疑われる可能性があります。
特に、毎年赤字申告が続いていると、事業の実態そのものを問われることもあり、税務調査の対象に選ばれやすくなります。

税務調査が入ると、帳簿や領収書などを詳細に確認され、経費として認められない支出があれば修正申告と追徴課税を求められます。
経費は事業に関連するものだけを正しく計上することが鉄則です。

確定申告の赤字に関するよくある質問

ここでは、個人の税務申告における赤字の扱いについて、特に多くの人が疑問に思う点をQ&A形式で解説します。
申告しなかった場合の罰則の有無や、副業がマイナスになった際の損益通算、複数年続いた場合の影響など、具体的なケースを想定した質問に回答します。

ご自身の状況と照らし合わせながら、制度への理解をさらに深めていきましょう。

Q. 確定申告で赤字の場合、申告をしなくても罰則はありませんか?

所得が赤字で納めるべき所得税が0円の場合、確定申告をしなくても無申告加算税や延滞税といった罰則は原則としてありません。
これらの罰則は、本来納付すべき税金があるにもかかわらず手続きしなかった場合に課されるものだからです。
ただし、申告しないことによるデメリット(所得証明ができない等)は存在するため、総合的に判断することをおすすめします。

【あわせて読みたい:注意点編】

確定申告を忘れてしまった場合のペナルティや、今からできる対処法について税理士が詳しく解説しています。

無申告とは?税金のペナルティ・今からできる対処法を税理士が解説

Q. 副業の事業所得が赤字です。給与所得と損益通算できますか?

はい、副業が「事業所得」として認められる場合、その損失は本業の給与所得と損益通算が可能です。
サラリーマンの方などがハンドメイド販売などで得た所得がマイナスになった場合、手続きをすることで給与から天引きされた所得税が還付されることがあります。

ただし、その活動が継続性や収益性のない「雑所得」と判断されると、損益通算はできないため注意が必要です。

Q. 2年連続で赤字を申告しても問題ありませんか?

事業の実態があり、計上している経費が適正であれば、2年連続で損失を申告すること自体に法的な問題はありません。
特に開業1年目、2年目などは、設備投資などでマイナスになることも考えられます。
ただし、正当な理由なく赤字が続くと、融資審査で不利になったり、税務署から事業性を疑われ、廃業を促されたりする可能性もゼロではありません。

まとめ

個人事業で売上が経費を下回り赤字になった場合、確定申告の義務は原則として生じません。
しかし、手続きをすることで、青色申告であれば損失を翌年以降3年間繰り越して将来の税金を抑える「繰越控除」が利用できます。
また、副業がマイナスだと給与所得と損益通算し、還付金を受け取れる可能性もあります。

申告しないと所得証明が発行できず、融資や賃貸契約に支障が出たり、国民健康保険料の軽減措置が受けられないといったデメリットもあります。
株や投資信託の特定口座での損失とは仕組みが異なるため、確定申告で赤字になった場合はメリット・デメリットを総合的に判断し、提出を検討することが重要です。

この記事の執筆者
武信 隼人
武信 隼人
税理士事務所CUBE 代表税理士 / タクバツ監修

個人事業主・フリーランスの確定申告、無申告、税務調査対応に強みを持つ税理士。これまで多くの税務相談・申告対応を行ってきた実務経験をもとに、タクバツの記事監修を担当しています。専門性だけでなく、わかりやすさと安心感のある情報発信を大切にしています。

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